2011年10月号掲載
危機にこそ、経営者は戦わなければならない! 言い訳をしない実践経営学
著者紹介
概要
バブル経済の崩壊、リーマン・ショック、そして東日本大震災…。企業を襲う突然の危機に、経営者はいかに対処すればよいのか。信越化学工業を優良企業に育て上げた著者が、自社で実践してきたことを例に、危機に対する心構え、企業の体質を強化するための具体策を語る。『社長が戦わなければ、会社は変わらない』(2002年刊)を大幅に加筆修正したもの。
要約
戦って乗り越えた危機
経営者の前に、危機は何度も訪れる。
日本のバブル経済崩壊後の長い不況、米国のITバブル崩壊による不況、リーマン・ショック後の世界不況など、何度も危機が訪れた。
そして、リーマン・ショック後の不況から世界が立ち直りかけていた2011年、大変な危機が襲ってきた。3月11日の東日本大震災である。
突然、危機はやって来る。絶頂期にあっても、経営者はそのことを忘れず常に備えねばならない。
自己のマンネリを打破する
危機は、経営者の心の中にあることもある。
私は、03年9月、投資家向けの説明会で、ある機関投資家の方からこう指摘された。「3期連続で営業利益の伸びは1桁です。信越化学が高度成長するのはもう無理なのではないですか」。
正直なところショックだった。果たしてこの批判が正当か否か、私は自らの経営を分析してみた。
すると、いくつかの事業は大きく伸びる可能性があることがわかった。にもかかわらず、この年までに9期連続最高益を更新していたことで、いつの間にか会社がマンネリに陥っていたのだ。
私は原点に立ち返った経営手法を、全社の隅々まで行き渡らせることにした。その結果、04年度には営業利益を20.8%増加させて2桁成長を実現。それ以降も、07年度まで4年連続2桁成長を遂げ、13期連続で最高益を更新した。
どれほど気を引き締めていたつもりでも、好調が続くと甘さが出てしまう。それに気づいたら、すぐに自らを叱咤しなければならない。経営者を叱ることができるのは、自分だけなのだから。
半導体設備を3年で償却
私は常日頃から、悪い時のことを考えて経営している。リーマン・ショック後の世界不況の時も、その前から不況に対する備えをしていた。