2012年5月号掲載
小が大を超えるマーケティングの法則
著者紹介
概要
「大きいことは、いいことだ」というCMが、かつて流行った。だが、21世紀は「小さいことは、いいことだ」の時代だ。消費者ニーズの多様化が進む今日、個性的な“小さな店”に魅力を感じる消費者が増えつつある。そうした人々を取り込むための、小さな企業だからこそ可能な「小規模を力に変えるマーケティング戦略」を、消費者調査のデータ等に基づき提案する。
要約
小さいことは、いいことだ
「大きいことは、いいことだ」というCMのキャッチコピーが流行ったのが、1960年代の終わり頃。高度成長の時代だ。
だが今や、規模の大きさは「強さ」を意味しない。逆に、経済の成熟化、需要の多様化、人口減少、環境問題といった時代のトレンドは、小さな企業にとって「追い風」となりうる ―― 。
「こだわり」を力にできるのは、小さな企業
ここに2つの店があるとする。パンを買う場合、あなたはどちらの店を選ぶだろうか。
A店:こだわりのパンを販売する店
B店:こだわりのパン、菓子、清涼飲料水、食料品を販売する店
選択肢:①A店、②B店、③どちらも同じ
国語的に考えれば、A店、B店ともに「こだわりのパン」を扱っているのだから、「どちらも同じ」という回答が多くなるように思える。だが、全国1000人の消費者を調査したところ、次のような回答を得た。
A店=79% B店=8% どちらも同じ=13%
圧倒的にA店を選ぶ人が多い。この結果からは、品揃えの幅を広げるほど、「こだわり」は薄まってしまうことが示唆される。
「こだわりのパンを、販売する店」と「こだわりのパンも、販売する店」との違いは大きい。
A店は明らかに小さな店のイメージであり、B店は大きな店のイメージだろう。小さな企業ほど、「こだわり」を武器にしやすいということだ。