2012年6月号掲載

「解」は己の中にあり 「ブラザー小池利和」の経営哲学60

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著者紹介

概要

老舗ミシンメーカーからグローバルな情報機器メーカーへ。現在、売上高の約7割をプリンター等の情報機器事業が稼ぐブラザー工業の業績は好調そのもの。この“変身”の立役者、小池利和社長の経営哲学を紹介する。「綿密な調査よりも試作品の投入」「『選択と集中』で発想を狭めない」等々、変化を重視する氏の考えは、組織の生き残りを考える上で参考になる。

要約

変身して成長するブラザー工業

 ブラザー工業と聞いて、私たちが最初に連想するのはミシンだ。だが、欧米ではプリンターや複合機などの情報機器で知られている。実際に、全売上高の7割近くを情報機器事業が稼ぎ出す。

 ミシンから情報機器へと主力事業を変身させたブラザーの業績は好調だ。2010年度の連結売上高は5000億円超、利益率も7%台となっている。

 100年を超える歴史の中で、ブラザーは大きく分けて4度の変身をしながら発展してきた。

 ①ミシン専業から、②編み機やタイプライターなどに多角化し、さらには③プリンターなどの情報機器で電子化や情報化を推進し、④ファクスに情報機器の機能を持たせた複合機や通信カラオケなどで情報をネットワーク化、という流れである。

 そして今、さらなる成長に向け5度目の変身を果たすべく、小池利和社長は奮闘を続ける。

 そんな氏の経営哲学、マネジメント手法とは?

自らを「可視化」して、距離感を縮める

 小池が現在、最も力を入れるのは社内向けのメッセージだ。これには、①「テリーからのメッセージ」、②「テリーズビデオ」、③「テリーの徒然日記」の3種類がある。

 ①は週に1度の社長メッセージ、②は①を補完する動画、③は歴史や名所旧跡を訪ねた話、スポーツ観戦など、小池の人となりを示すものが多い。

 ブラザーはもともと家族主義的な社風を有する。しかし、グループ全体で3万人超の従業員を抱える今日、昔のようなわけにはいかない。

 「でも規模が大きくなっても家族主義のDNA(遺伝子)は残したい。そこで従業員との交流を深めるためにブログという形で、まずは自分のことを書き始めたのです」と小池は言う。

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