2012年10月号掲載
人間関係で悩んだときに思い出したい 「中国古典」の教え
著者紹介
概要
中国古典は、“人間力”を高める上で大いに参考になる。例えば、『荀子』の「人の性は悪、その善なるは偽なり」、あるいは『十八史略』に見える「人生は朝露の如し」。含蓄に富む中国古典の言葉は、今も色褪せることなく、貴重な示唆を与えてくれる。本書は、その中から、現代を生きていく上で心得ておきたい言葉を取り上げ、わかりやすく解説する。
要約
人生に役立つ中国古典
日本の先人たちが、多くのことを学んだ中国古典。その教えは、現代を生きる私たちにも大いに参考になる。例えば ――
性、相近し。習い、相遠し
「生まれながらの素質に、それほど違いがあるわけではない。その後の習慣の違いによって大きな差がつくのである」(『論語』)
広い世の中であるから、中には素晴らしい素質に恵まれて生まれてくる者もいる。逆に、叩いても磨いても、どうにもならない人もいる。
ただし、両方とも全体の中ではごく少数であろう。残りの大多数は似たり寄ったりの素質なのだが、それにやがて大きな差がついていくのは、毎日の生活習慣の違いによるのだという。
例えば、少しずつでも自分を磨く努力を続けた場合と、そういう努力を怠った場合である。
3年や5年ではいくらも違いはないであろう。だが、10年、20年の長い目で見ると、その違いは大きく開いていくはずである。
これを知るはこれを行うに若かず。学はこれを行うに至りて止む
「知ることよりも実践することの方が大事である。学んで得た知識は、実践にまで行きつかなければ、意味がない」(『荀子』)
現代は様々な情報があふれている。たぶん、知識の量は、現代人の方が先人たちよりも上回っているだろう。では、それだけ現代人の方が賢くなっているのかといえば、必ずしもそうではない。
いや、それどころか、生活に密着した知恵とか、厳しい現実を生き抜いていく知恵のようなものは、むしろ退化しているのではないかと思われる。
それは他でもない、どうでもよいような知識が雑然と詰め込まれているだけで、生きた知恵として働いてこないからではないのか。
知識を身についたものにするためには、次の2つのことが望まれる。