2013年2月号掲載

日本型「無私」の経営力 震災復興に挑む七つの現場

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著者紹介

概要

東日本大震災の後、様々な企業が利益を度外視した復興支援を行った。自衛隊に代わり現地社員が救援物資センターを陣頭指揮したヤマトホールディングス、津波を被った写真を洗浄し、被災者の思い出を救った富士フイルム…。いわば、「無私の支援」を行った企業にスポットを当て、それぞれの具体的な活動を紹介するとともに、そうした行動を生んだ土壌に迫る。

要約

徹底した現場主義とトップの決断力

 2011年3月11日の東日本大震災後、様々な企業が、利益を度外視した支援活動を行った。

 「無私の支援」「利他の経営判断」ともいえるこれら復興支援は、具体的にどのようなものだったのか。そして、何がそうした行動を生んだのか。

自衛隊をも動かした情熱

 東日本大震災の発生直後から、ヤマトグループの現地社員たちは自ら行動を起こした。

 例えば、宮城県・気仙沼支店の約80名の社員は、通信回線が全て寸断された中、誰に言われるわけでもなく支店が統括するセンターに集まった。

 社員たちは避難所で困っている人のためにできることをしようと、救援物資が集められている青果市場(救援物資センター)へ向かった。そして、集積所の運営を自分たちにやらせてほしいと気仙沼市役所へ打診し、当時、自衛隊が管理していた救援物資センターの陣頭指揮を執ることになった。

 通常であれば自衛隊が全体を監督し、その下で民間企業が何らかの役割を担う。しかし、自衛隊からは、「物流は物流のプロにお願いしたい。我々はその指示に従う」と伝えられたという。

 自衛隊にとっては行方不明者の捜索が最優先だったことが想像されるが、ヤマトの社員の情熱とプロ意識が彼らの心を動かしたのかもしれない。

先輩の姿から理念を「感じ取る」

 なぜ、社員たちは地域のために自ら率先して動くことができたのか。社長の木川眞はこう答える。

 ヤマトグループの企業風土を一言で表すとすれば、社訓の最初にある「ヤマトは我なり」だ。

 社員1人1人が、ヤマトの代表であるという意識を日頃から持っている。そして、経営陣も基本的に社員を信用して任せるという方針が、社員のモチベーションを高め、顧客から高い評価を得るという好循環につながっている。

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