2013年8月号掲載
超金融緩和の時代 「最強のアメリカ」復活と経済悲観主義の終わり
著者紹介
概要
いわゆる「アベノミクス」の一環として、日銀が「異次元の金融緩和」に踏み切った。「バブルを助長する」など、様々な批判がある超金融緩和だが、果たして成功するのか? 本書は、量的金融緩和によりリーマンショックの痛手からほぼ立ち直った米国経済の状況や、金融制度の歴史を踏まえつつ、超金融緩和政策を詳細に検証、今後の世界経済のトレンドを見通す。
要約
世界経済の新たな潮流
リーマンショックから4年が経過し、リーマンショックとは何であったのか、を検証する事実が揃ってきた。
そして、事実をつなぎ合わせると、過去4年間を支配していた経済常識が、根底から間違っていたことに気づかされる。
人々は、2007~09年の世界金融危機は経済体制の破綻であり、暗い将来への入口と考えていたに違いない。特に日本人にその確信が強かった。何しろ日本のジャーナリズムとアカデミズムは悲観主義によって席巻されてきたからだ。
その要諦は、「バブル崩壊と金融危機は過去の間違った繁栄、投機、経済行動の当然の報い」であり、「これからはそのつけを払う暗い将来がやってくる」というものである。
しかし、現実はそうはならなかった。米国経済は1990年以降の日本のようなデフレには陥らずに、本格成長軌道に復帰している。
その最大の理由は政策が適切であったということだ。FRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長による量的金融緩和政策(QE=Quantitative Easing)は、崩壊の危機にあった金融市場を立て直し、米国経済を正常な軌道に引き戻した。
経済発展に「モラルハザード」は不可欠
こうしたQEについて、「金融機関のモラルハザードを助長する」という意見がある。
量的金融緩和により潤沢な資金が市場に供給されると、経営危機に陥った金融機関は一息つけるわけだが、正義感の強い経済学者や政策当局者にいわせれば、それがモラルハザードだというのだ。
だが、過去の金融制度の発展を振り返ると、「モラルハザード容認とも見られる膨張的金融政策が経済発展の原動力」だったことがわかる。
例えば、今では常識になっている管理通貨制度だが、ケインズたちはこれを提唱した当時、「モラルハザードを助長する」という批判を浴びた。
しかし、管理通貨制度に切り替わったことによって、金融政策の自由度が飛躍的に高まり、無制限の通貨発行ができるようになった。