2014年4月号掲載
ひらめきはカオスから生まれる
Original Title :THE CHAOS IMPERATIVE
著者紹介
概要
イノベーションの源泉となる「ひらめき」。これを効果的に生み出すには、どうすべきか。「カオス」 ―― 物事が制御できない状態を意識的に導入することで、斬新なアイディアが芽吹くという著者たちが、そのユニークな方法をわかりやすく説く。ペストが猛威をふるった中世の欧州、アインシュタインが相対性理論を導いた経緯など、事例も盛り沢山。楽しく読める。
要約
カオスを巧みに活用する
人生であれ仕事であれ、誰にとっても「穏やかなカオス」は不可欠である。
議題を定めない話し合いの場を設けたり、異質の人材を輪に加えたりすることのメリットは、実は計り知れない。
小さなカオスを意識的に導入することで、思いもよらない「偶然(セレンディピティ)」が生まれる。創造的なアイディアも、そうした風土から芽吹くのである ―― 。
組織が柔軟性を高めるには
ある日、私はマーチン・デンプシー陸軍参謀総長に呼ばれた。彼は、私を前にしてこう言った。
「軍隊は、全てに硬直化して柔軟性に欠ける。何事も効率よりは手続きが優先だ。書類に埋もれて、斬新な発想や改革が芽を出す余地がない」
9・11同時多発テロ事件以前、軍は飛行機をハイジャックしてビルに突っ込むテロリストの破壊力の大きさを、想像することさえできなかった。
彼は、尋ねた。「現実世界への適応能力を高めるために、軍隊は一体何をすべきだと思う?」。
私は答えた。「組織の中にもっと“カオス”を創造する必要があると思います。少しばかり“ペスト”を導入するのです」。
そして私は、1つの具体例を語り始めた。
ネズミがもたらしたルネッサンス
ペストは、アジアやアフリカの港を出る貿易船に乗り込んだネズミが西欧に持ち込んだ病気だ。悪疫は瞬く間に中世ヨーロッパの各都市へ広がり、ヨーロッパの人口の何と約半分が失われた。
1348年、ペストが上陸した当時、西欧は、蒙古民族が征服する気にもならないほど貧しかった。