2014年5月号掲載
できる課長がやっている52の行動 行動科学を使った「いい職場」のつくり方
著者紹介
概要
部下が自発的に動き、高い業績を残せる職場 ―― 。上司なら誰もが望む、「いい職場」のつくり方を伝授。カギは金銭ではなく、成長の実感、快適さなど「非金銭的報酬」だ。部下は風通しのいい職場で、わかりやすく仕事を教えてもらい、自分なりに成長したいと思っている。それに応えることで、彼らは素晴らしい働きをするとし、必要なメソッドの数々を紹介する。
要約
部下が育つ職場とは?
2012年に産業能率大学が上場企業の課長を対象に行った調査では、仕事に関する悩みのトップが「部下がなかなか育たない」だった。
仕組みをつくらなければ、部下は育たない。「部下が自発的に動けるような職場(仕組み)」さえつくれば、部下は勝手に育っていくものだ。
私が40代の課長たちに、職場づくりや部下育成の方法についてアドバイスをすると、彼らの多くはこう言って驚く。「そんなことまで、しなくちゃいけないのですか?」。
そう思う気持ちはわかる。だが、納得できるかできないかといった問題ではなく、新しい世代が育たなければ会社が存続できないのである。
「トータル・リワード」が自発的に動く部下を生む
今、多くの日本企業では、かつての米国企業が悩まされたのと同じことが起きている。心を病む社員が続出しているのである。というのも、成果主義の悪い部分だけを真似てしまったからだ。
多くの日本人は、「米国企業といえば厳しい成果主義」だと思い込んでいる。しかし、彼らが単純な成果主義をとっていたのは過去の話だ。
もともと、IBMなど米国の巨大メーカーは、年功序列制度を取り入れていた。だが1980年代、日本のメーカーが高品質で安価な製品を輸出するようになると、米国のメーカーは窮地に立たされ、経営上、成果主義をとらざるを得なくなった。
しかし、90年代に入ってその見直しが進んだ。なぜなら、仕事ができない社員は不要扱いされうつ病にかかり、仕事ができる社員は働きすぎて燃え尽き症候群に陥るケースが増えてきたからだ。
また、成果主義では社内の人間がほとんど敵であるため、職場は殺伐とした雰囲気になった。
有能な人材を確保するのに、単純な成果主義だけではうまくいかないことが明確になったのだ。
こうした経緯を経て、金銭的報酬以外のものでも社員に報いる「トータル・リワード(総合的な報酬)」という考え方が浸透してきたのである。