2014年12月号掲載
ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか?
著者紹介
概要
高齢化・過疎化の進行で、“限界集落”となっていた石川県羽咋市の神子原地区。同市市長から「集落の活性化」と「農作物のブランド化」を託された市役所職員・高野誠鮮氏は、わずか4年で当地を立ち直らせた。本書では、集落を救うため氏が手がけた様々な事例を紹介。ブランド化に向け、ローマ法王へ米を献上するなど、発想には限界がないことを教えてくれる。
要約
「一・五次産業」で農業革命!
最近の会社員は、公務員化しているようだ。
新しいプロジェクトを始めようとすると、失敗を恐れて初めの一歩が踏み出せず、前例に縛られて、いい知恵も出てこない。そのくせ会議は何十回も開き、分厚い立派な企画書を作りたがる…。
私は聞きたい。実際に動き出すのはいつですか、誰ですか? と。
「限界集落」の悲しい現状
かく言う私も、実は公務員だ。能登半島の付け根にある、石川県の羽咋市役所で、農林水産課ふるさと振興係の課長補佐をしている。
羽咋市の神子原地区は、かつて1000人以上いた人口が半減し、65歳以上の人間が半数を超えるという“限界集落”になっていた。
平成17年の春、私は市長から、過疎高齢化集落の活性化と農作物の1年以内のブランド化を図るプロジェクトを頼まれた。
集落を再生するために知恵を絞り、戦略を練った。だが、役所の人間が方法を唱えただけでは、集落の皆は納得しない。「失敗したらどうするんや」と、非難の大噴出を浴びた。だから、私は見本を見せた。まずはこちらがやってみせて、今度はやってもらって納得させないと、人は動かない。
「一・五次産業」への挑戦!
神子原地区には耕作放棄地が46haもある。また、かつて1000人も住んでいたのに、平成16年には527人に激減している。なぜここまで疲弊したのか。その原因を考えてみた。
簡単だった。農業ではメシが食えないからだ。そこでまず、農業のシステムそのものをよく考えてみた。欠点を探して見つめないと、改善案は考えられないからだ。
農林漁業という一次産業の最大の欠点は何かというと、自分で作ったものに自分で値段をつけられないこと。1本100円もかけて作った大根を市場に出しても、「今日は全国で大根がたくさんできたから30円だ」と言われてしまう時がある。
生産者が希望小売価格をつけられないのは、本当の産業ではないと考えた。ならばどうするか。