2015年5月号掲載
角川インターネット講座10 第三の産業革命 経済と労働の変化
概要
インターネットの商用化から約20年。その普及に伴い、経済、産業、そして人々の暮らし方は大きく変わった。インターネットによる各種の変化を指して、「第3の産業革命」といわれる。では、今後、それはどこに向かうのだろう? 大学教授、起業家、ソフトウェア開発者ら世界のエキスパートたちが、インターネットがもたらす変化の本質、行方を解き明かす。
要約
インターネットとモノづくり
インターネットによって生じる様々な変化を指して、「第3の波」とか「第3の産業革命」などと呼ぶ人も多い。でもそれにしては、その結果が経済統計には全然出てこなかった。
蒸気機関を使うようになったことから生じた産業革命では、生産性は何千倍も上がった。今回の「革命」は、それに比べたら見る影もない。
とはいえ、インターネットが産業の至るところで活用されるようになってきたのは間違いない。そして、それに伴う変化は様々に存在する。
ネットワークはものづくりをどう変えるか
「ファブラボ(FabLab)」という活動がある。
これは、電子工作キット、3Dプリンター、レーザーカッターといった高速プロトタイピング(製品などの試作モデルを製作する手法や過程)のための機材をパッケージにまとめて共通化し、その工房の輪を世界中に広げる活動である。
2014年現在、ファブラボは世界60カ国以上400カ所以上に存在し、毎日情報交換をしている。
ファブラボというネットワーク上では、「モノ」の設計図やファイルが行き交う。
データを別の場所に送れば、たとえ国境を越えた離れた場所であっても、同じ機材で出力し、同じモノを制作できる。モノをデータの状態にして、送りあっているのだ。これはつまり、物質の「遠隔転送技術(テレポーテーション)」の初源である。
離れた場所の工房や機械を結びつけるネットワークを構築することによって、世界のどこかでモノが必要になった時、どこかの工場でそれをつくり、輸送する必要は究極的にはなくなっていく。データを近くのラボに送り、そこでつくればよいからだ。そして、この時になって初めて、インターネットの真の力が顕在化する。
データを機械に送ればスマホができる?
現在、インターネット上に流れる設計図が急速に増加している。それを3Dプリンターなどに放り込めば、即座に物質化できる。
例えば、米国のスミソニアン博物館のサイトではマンモスや恐竜の卵などの3Dデータが、NASAのサイトでは人工衛星や小惑星の3Dデータがダウンロードできる。