2016年7月号掲載
FinTech入門 テクノロジーが推進する「ユーザー第一主義」の金融革命
著者紹介
概要
今、話題を集める「FinTech」。金融とテクノロジーを融合した、この新たな動きについて、日本でFinTechサービスを提供する著者たちがわかりやすく解説した。今FinTechが注目される理由、提供される様々な新サービス、そして未来の世界にもたらされるもの…。可能性に満ちたFinTechの全容がわかる、格好の入門書である。
要約
FinTechが注目される理由
FinTech(フィンテック)とは、金融(Finance)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、金融と技術の融合のことをいう。両者の融合が進むことで、新たな金融サービスが次々に生まれ、ユーザーはこれまでにないメリットを享受できる。
今、そうしたFinTechサービスが生まれつつある。例えば、個人の金融情報をワンストップで見える化する「個人資産管理(PFM)」サービス。
そして、その金融情報を基に、ビッグデータ解析や人工知能(AI)、金融工学などを組み合わせ、さらに進化した金融サービスが開発されている。資産のポートフォリオを自動的に作成し、個々のユーザーに適した投資を低コストでアドバイスする「資産運用」サービスなどがそうだ。
ただ、FinTechは、概念としてはそれほど新しいものではない。もともと金融はテクノロジーによって進化してきた。では、なぜ今、FinTechが注目されるのか。主な理由は、次の3つである。
①技術の開発コストの低下
まず、技術の開発コストが下がった。
その理由の1つに、オープンソースソフトウエアの進化がある。以前なら、ITサービスを開発しようとすれば、開発言語に習熟した人を雇用して、時間をかけてプログラムを書く必要があった。
しかし今は、例えば、ライブラリと呼ばれる、先人たちの作ったプログラムがインターネット上で共有されているので、それらを組み合わせることで、新しいアイデアを手軽に試せる。
②サービスを普及させるコストの低下
さらに、そうやって新しく開発されたサービスを普及させるためのコストも大きく下がった。
最近ではスマートフォンが普及し、サービス利用のためのアプリをiTunesのAppストアなどで簡単に、しかも安価に公開することができる。
③サービスを使う側、ユーザーの変化
今や誰もがスマートフォンで、どこにいても最も安い商品を探し、買うことができる。こういった便利さに慣れたユーザーは、金融にもわかりやすさや直感的な納得を求めるようになってきた。そうしたユーザーの新しい金融サービスへの期待値の大きさが、FinTechへの注目度を高めている。