2017年7月号掲載
ビットコインは「金貨」になる 円崩壊に備える資産防衛術
著者紹介
概要
人工知能時代のコンピューターが生んだデジタル通貨、“ビットコイン”。その仕組みや従来の通貨との違い、各国の対応を、事情に詳しい国際弁護士が解説する。アフリカを中心に広がるデジタル通貨「エムペサ」、ビットコインのATMが存在するスイス…。ドルや円など紙幣の価値、資産防衛を考える上で、新たな視点をもたらす書だ。
要約
ビットコインの登場で世界史が変わる
「ビットコイン」は、人工知能時代のコンピューターが作り出したデジタル通貨である。
日本でビットコインは、単なる投機金融商品だというイメージが強い。しかしそのような思い込みは、100%間違いである。
ビットコインは銀行を不要にする
ビットコインは、今まで不可能であったことを可能にしたものである。
ある人からある人へおカネを送るには、銀行などの送金人を介すことが必要だ。だが、ビットコインは銀行なしで送金することを可能にした。PCかスマホを持っていれば、アマゾンの密林にいても、インターネットを通しておカネを受け取れる。銀行口座はまったく不要だ。
ビットコインが不正を弾く理由
今までの通貨の最大の問題点は、偽造、不正侵入、ハッキングであった。銀行のシステムがハッカーに襲われ、ごっそりカネを持っていかれる、クレジットカードがハッカーによって不正使用されるといった被害は後を絶たない。それがサーバーを使った通貨システムの限界なのだ。
ところが、ビットコイン取引は、これとまったく違う。ビットコインのソフトを使ってダウンロードしたものを「ウォレット」というが、ここから送金をする。その送金の信号はすべて暗号化され、1つ1つに電子認証が組み込まれていく。相手はそれをそのまま受け取る。
この間に犯罪者が入り込む余地はまったくない。だからこそ、ビットコインは商取引に一大革命をもたらすといわれているのだ。
経済学で、どんな時も不変な、ただ1つの原理
経済学の原理で、ただ1つ正しいものがある。その原理とは、「大量に作られるものは値段が安い」ということ。いくらでも大量に作れるものは、どんどんと値段が下がっていく。
一国の政府が発行する通貨(フィアット・カレンシー)は、大量に作られる。リーマンショックの後、世界の中央銀行は大量に札束を印刷した。この傾向は現在も続いている。ということは、どの通貨もいずれ値段が下がる。その証拠に、大量に通貨を刷った国の金利は、ゼロもしくはマイナスになっている。ユーロ、ドル、円もそうだ。
では、円の価値は長期的に見て下がっているのか、上がっているのか。
それを見る指標は、二国間通貨の交換レートではない。人類の歴史の中で、唯一価値の基準となっているもの、つまり「金(キン)」である。「金に比べて円がどれほどの価値を持っているのか」という変化を見なければならない。