2017年1月号掲載
「成功」と「失敗」の法則
著者紹介
概要
人生における真の「成功」を獲得するために、いかに思い、いかに生きるべきか ―― 。京セラ、KDDIを創業し、世界的企業へと発展させた稲盛和夫氏が、懸命に生きる中で得た人生哲学を綴った。「試練を通じて人は成長する」「善き思いをベースとして生きる」等々、素晴らしい人生を送るための原理原則が平易に説かれている。
要約
人生において大切なこと
人生を終える時に、立派な人格者になった人もいれば、そうでない人もいる。その違いは、人生を歩む中で、自らを磨き人格を高めることができたかどうか、ということにある ―― 。
「試練」を通じて人は成長する
では、どのようにして、自分を磨いていくのか。
私は「試練」を経験することが、人間を大きく成長させてくれるチャンスになると考えている。
例えば西郷隆盛は、子どもの頃は「ウド」というあだ名の、目立たない子どもだった。だが、後には人格者となり、明治維新の偉業を成し遂げた。
西郷は様々な試練に遭遇している。例えば遠島という不遇を2度も経験した。特に2度目は遠く離れた沖永良部島に流され、狭い牢獄に閉じこめられるという悲惨な目に遭っている。しかし、そのような逆境の中でも、東洋古典の耽読などを通じて、自分を高める努力を怠らなかった。
その後、許されて島を出た西郷は、高潔な人格と識見を備えた人物として人々の信望を集め、やがて明治維新の立役者となる。
この西郷の人生は、試練に遭遇した時にどう対処するかが、いかに人生で大切かということをよく表している。苦難に直面した時に、打ち負かされて夢を諦めるのか、それとも、苦労を苦労と思わずひたむきに努力を重ねるのか、ここに人間的に成長できるかどうか、その分岐点がある。
なぜ哲学が必要なのか
世間には高い能力を備えながら、道を誤る人が少なくない。自分さえ儲かればいいという自己中心の考えから不祥事を起こし、没落する人がいる。
古来「才子、才に倒れる」といわれる通り、才覚にあふれた人はついそれを過信して、あらぬ方向へと進みがちだ。
才覚が人並みはずれたものであればあるほど、それを正しい方向に導く羅針盤が必要となる。その指針となるのが、理念や思想であり、哲学なのだ。そういった哲学が不足し、人格が未熟だと、いくら才に恵まれていても道を誤ってしまう。
人格は「性格+哲学」という式で表せる。人間が生まれながらに持っている性格と、その後の人生を歩む過程で学び身につけていく哲学の両方から人格は成り立ち、陶冶されていく。