2017年3月号掲載
僕が「プロ経営者」になれた理由 変革のリーダーは「情熱×戦略」
著者紹介
概要
ヒューレット・パッカード(HP)とコンパックの統合で誕生した日本HPでトップを務め、ダイエー、マイクロソフト日本法人でも、社長として変革をリード。そんな「プロ経営者」が語った経営論である。多様な環境に身を置く中で培われた戦略・戦術論や、変革の時代のリーダーのあり方、自分の価値の高め方などが披露される。
要約
どうすれば、自分の価値を高められるのか
1つの会社に一生勤める時代ではなくなった、とよく言われる。とはいえ、一歩踏み出すことをためらう人は、まだまだ多いのではないか。
転職をすることが重要なのではない。きちんとスキルを身につけ、多様な経験を積んで、1つの閉じた世界だけでなく、普遍的に周囲から評価される「市場価値」を高めることが大切なのだ。
なぜ外資系の「プロ経営者」として結果を出せたか
コンパックコンピュータとヒューレット・パッカード(HP)の合併で誕生した日本HPやダイエー、日本マイクロソフトで、私は社長を務めた。
なぜ「プロ経営者」になれたのか。特に外資系企業で、なぜそれなりの評価をされたのか。
その理由は、自分なりに自覚している。外資系企業の日本法人では、全く異なる2つの側面、能力が経営リーダーに求められるからである。
まず日本のお客様にものを売るには、日本的な営業力、つまり人間同士としての親密さや信頼を醸成した上でのウエットな関係や、そこに至るまでの情熱に基づく営業力が求められる。
一方で、本社とのやり取りや連携は、非常にロジカルでタフネゴシエイトな世界だ。日本法人のトップもタフなやり取りができなくてはならない。
この日本人に受け入れられるキャラクターや営業力と、真逆の米国人に受け入れられるキャラクターやアグレッシブさの両方を持ち合わせていなければ、日本法人の成績は上げられない。
両面能力を身につけるには
この両面能力は、現在の日本企業が取り組まねばならない経営改革にもそのまま通じるものだ。両面能力を備えた経営リーダーを育てるか招聘しないと、新たな経営体制に脱皮できない。
両方の能力を身につけるには、まずは自身の器を大きくしないといけない。両方が1つの体の中で共存できるほどの「帯域幅」が必要だ。かつ、若いうちに両方の文化を体験しておく。中高年になって気づいても、感性や発想がどちらか一方になっていれば、帯域幅を広げられない。
「ビジネスパーソンとしてのマーケットバリュー」を高めるには、スキルや知識を磨くだけでは十分ではない。多様な環境に身を置き、失敗と成功の経験を積み、様々な人と仕事をすることで、人としての「器」を大きくしていくことが大切だ。