2017年8月号掲載
そろそろ、人工知能の真実を話そう
Original Title :LE MYTHE DE LA SINGULARITÉ:Faut-il craindre l'intelligence artificielle?
- 著者
- 出版社
- 発行日2017年5月25日
- 定価1,430円
- ページ数190ページ
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著者紹介
概要
「人工知能(AI)はいずれ人間の能力を超え、我々を支配するようになる」。最近、AI脅威論を唱える学者やウェブ企業が多い。だが、AI研究者にして哲学者の著者は、これを否定。機械学習の技術的難点、論理の穴などを指摘して脅威論を一蹴するとともに、将来の不安を喧伝するグーグルやアマゾンなどIT大企業の思惑を暴く。
要約
状況は切迫している(らしい)
2014年5月1日、イギリスの宇宙物理学者スティーヴン・ホーキングが、英紙『インデペンデント』に掲載された声明文で、「人工知能のもたらす不可逆的結果」について警鐘を鳴らした。
技術は瞬く間に発展し、すぐに制御不能となって、人類を危機的状況にさらすだろう。だが、今ならまだ止められる。明日ではもう遅いのだ、と。
科学者たちの警告
この懸念に、そうそうたる顔ぶれの科学者たちも同調している。例えば、マサチューセッツ工科大学の理論物理学教授マックス・テグマークや、カリフォルニア大学バークレー校で人工知能を研究する教授スチュワート・ラッセルらもまた、ホーキングの声明文に署名した。
確かに、人工知能は驚異的な発展を遂げた。グーグルの自動運転車、アップルの音声認識アプリケーション「Siri」、クイズ番組で人間に勝ったIBMのコンピュータ「ワトソン」 ―― 彼らはこれらに言及した上で、こう警告を発する。
コンピュータの機械学習能力は、「ビッグデータ」(大量のデータ)の供給により、いずれ予測不能なものになる。なぜなら、もはやそれは、人間が書いたプログラムで動くのではなく、世界中を走り回って情報を集め、それらが機械的に収斂して築きあげられた知識で動くようになるからだ。
このように動作が予測できなくなると、コンピュータの自律性は増大し、結果、コンピュータが我々を支配するようになるだろう ―― 。
カーツワイルが予言する不老不死
では、人工知能の権威であるレイ・カーツワイルは、どう考えているのか。彼は、人工知能が改良されていくことでどうしても生まれてしまう結果があると予言している。
カーツワイルによると、我々はもう間もなくコンピュータに意識をアップロードするようになり、それによって不死を手に入れられるのだという。それが彼の計算によると、2050年、おそらくはもう少し早まって、2045年になる。
そうなれば、人類は生き残るために、テクノロジーとハイブリッド化されて、ある種の「霊魂移入」にたどり着くことを余儀なくされる。
霊魂移入とはもともと、死後、輪廻転生によって魂が次の肉体にたどり着くことを意味するが、ここでは、脳が生物学的に死んだ後に、意識がデジタル世界に移行するという意味になる。
ひとたび意識がデジタル化されてしまえば、それはどこまでも生きながらえる。つまり、これこそが不老不死だというのだ。