2017年11月号掲載

米陸軍戦略大学校テキスト 孫子とクラウゼヴィッツ

Original Title :Sun Tzu and Clausewitz:The Art of War and on War Compared

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著者紹介

概要

中国春秋時代に孫武が著した『孫子』と、プロイセンの将軍カール・フォン・クラウゼヴィッツが著した『戦争論』。東洋と西洋を代表する軍事戦略の二大名著を、それぞれの言葉を引きつつ比較し、共通点や相違点を明らかにした。時代的、地理的、文化的な違いはあるが、共通する見方も少なくない。戦略の本質が学べる1冊だ。

要約

政治のリーダーシップ

 戦争を論じた数多の古典の中でも、孫武が著した『孫子』(紀元前5世紀頃)と、カール・フォン・クラウゼヴィッツが著した『戦争論』(1832年)は、今日においてもなお傑出した軍事古典であるといえる。

 両者は時代的、地理的、文化的な隔たりがあるが、その基本的な戦略の論理には類似点が多い。

孫武にとっての戦争

 『孫子』は冒頭で、次のように言う。

 「孫子曰く、兵は国の大事なり。死生の地、存亡の道、察せざるべからざるなり」

 (戦争、特に武力戦とは、国家にとって回避することのできない重要な課題である。国民にとっては生死が決せられるところであり、国家にとっては存続か滅亡かの岐れ道である。我々は、戦争、特に武力戦を徹底的に研究する必要がある)

 戦争は、あくまでも国家の国益保全にかなうものでなければならないとする。また、こうも言う。

 「利に非ざれば動かず、得るに非ざれば用いず、危うきに非ざれば戦わず」

 (国家目的の達成に寄与しない武力行使は、行ってはならない。目的実現の可能性のない武力行使は行ってはならない。他に方法がない危急存亡の時でなければ、武力行使を行ってはならない)

 従って、武力戦の是非と開戦の決断は、軍事的指導者によってではなく、政治指導者によって行われなければならない。

クラウゼヴィッツにとっての戦争

 クラウゼヴィッツも、戦争における政治の優位性を主張し、あくまでも政治目的にかなう限りにおいて、武力戦を合理的な道具として認めている。

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