2018年3月号掲載
60歳から会社に残れる人、残ってほしい人
著者紹介
概要
定年を迎えた時、会社から「残ってほしい」と言われる人。それは、結果にこだわらず、常に全力投球する人 ―― 。キヤノン電子社長の酒巻久氏が、退職後も「必要とされる人」であるための生き方を述べた。若い頃の何倍も勉強する、人を巻き込む力をつける等々、自身の経験に基づく、生涯現役のヒントの数々が示される。
要約
現役でも退職後でも「必要な人」でいるには
私がキヤノン電子の社長に就任したのは1999年。以来、20年近く経営に携わっているが、私自身すでに70代ということもあり、「定年後の生き方」などを聞かれる機会が増えてきた。
なかでも、「定年を迎えても会社に残れるのはどんな人ですか?」とよく聞かれるが、私は「結果にこだわらず、常に全力投球する人」こそ「会社に残ってほしい人」だと考えている。
常に全力投球をしていれば、必ずよき仲間が周りに集まり、評価してくれる人が現れ、そして結果も伴うようになってくる。大切なのは「今、この時、この場所」で全力投球をすることである。
「残りたい」ではなく、「残ってほしい人」になる
企業にとって「残ってもらいたい人」とはどんな人か。高学歴の人や役職者であれば残ってもらいたいのかというと、そうではない。知識があっても何でもケチをつける「口先評論家」であれば、会社全体の足を引っ張るだけだ。こうした人は、決して「残ってほしい人」にはなり得ない。
キヤノン電子に中学卒で入社し、定年を迎えた人がいたが、その人を知る誰もが「是非とも残ってほしい」と話すほどの人だった。入社して以来、よい仕事をしてきたからこその評価なのだが、同時にその人には「人間力」が備わっていた。
人の心をつかむ人柄や、経験に裏打ちされた人間力の方が、華々しい学歴や職歴に優る。
定年後も会社に残りたいのなら、皆が「残ってほしい」と願う人になることが何より大切である。
技術力の低下を自覚し、プラスアルファで補う
「残ってほしい人」になるために大切なことの1つが、「勉強し続けること」である。
ある調査によると、人間は35歳頃から、技術力(専門能力)は落ちてくる。私の経験からも、20代のピークを100とすれば、40歳頃には50ぐらいまで落ちると感じている。
若い頃に比べて技術力が落ちていくとすれば、高い専門性を維持するためには若い頃の何倍もの勉強が必要になるし、それでも低下する技術力を補う何かを磨くことが大切だ。
では、何で飛躍するかというと、例えば「人を巻き込む力」をつける。新規事業などは、上司や部下を巻き込むことで初めてうまくいく。