2018年8月号掲載
エクスポネンシャル思考
著者紹介
概要
表題の「エクスポネンシャル思考」は、指数関数的(エクスポネンシャル)に加速する科学技術の進化とどう向き合うかを考えるもの。米シリコンバレーのシンギュラリティ大学が教える思考法だ。テクノロジーを俯瞰し、地球規模の課題の解決を目指す。この、AI時代を生きる上で欠かせないスキルを、日本人向けにかみ砕いて説く。
要約
全産業が根こそぎ変わる時代
日本は今、予測を超えたテクノロジーの進化を目のあたりにし、不安に怯えている。
今後、数年で製造業は完全に形を変え、サービスは自律化し、デジタルとリアルの壁は溶解する。この波を起こす者と、波に呑み込まれる者の差は悲劇的とすらいえる。
2015年、私は米シリコンバレーの研究教育機関、シンギュラリティ大学で学んだ。そこでは、指数関数的(エクスポネンシャル)に加速するテクノロジーの進化にいかに向き合うか、いかに先回りして取り込むかという議論が行われていた。
私は同大学で、これからの激動の時代を生き抜く上ですべての人が身につけるべき、エクスポネンシャルな思考方法を学んだ。だが、その思考法は、文化的背景の違う日本人には理解しにくい。
そこで、その内容を咀嚼して解説しよう。
エクスポネンシャル・テクノロジー俯瞰力
社会基盤や産業基盤に大きな変化をもたらすテクノロジーを、「エクスポネンシャル・テクノロジー」と呼ぶ。例えば、次のようなものがそうだ。
ビッグデータ分析/デジタル取引/人工臓器/自動運転車/遺伝子治療/再生可能エネルギー/3Dプリンター/無人航空機…。
これらを、全体として追うことができているか、理解しているか、というのは将来を考える際、とても重要だ。エクスポネンシャル・テクノロジーを俯瞰すると、様々なものが見えてくるからだ。
私はこれを「エクスポネンシャル・テクノロジー俯瞰力」と呼ぶ。
以下、いくつかのテクノロジーにフォーカスし、それらがもたらす未来を俯瞰してみよう。
誰もがアクセスできるコンピューティング能力
今、私たちがスマートフォンからアクセスできる情報量は、20年前の米大統領より多いという。