2019年1月号掲載
気候カジノ 経済学から見た地球温暖化問題の最適解
Original Title :THE CLIMATE CASINO:Risk, Uncertainty, and Economics for a Warming World
- 著者
- 出版社
- 発行日2015年3月24日
- 定価2,200円
- ページ数449ページ
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著者紹介
概要
今、経済成長が、気候や地球に意図せぬ危険な変化をもたらしている。これを「気候カジノに足を踏み入れつつある」と例える著者が、地球温暖化問題を論じた。温室効果ガスの過剰排出の原因、気候変動に立ち向かうための方策などが、2018年にノーベル経済学賞を受賞した経済学者の目から、わかりやすく、論理的に説かれる。
要約
気候変動の経済的起源
地球温暖化は、人類と自然界にとって大きな脅威だ。私は、温暖化問題において「我々は気候カジノに足を踏み入れつつある」という比喩を使う。
この表現を通じて私が言いたいのは、経済成長が気候と地球のシステムに意図せぬ危険な変化をもたらしているということだ。我々が投げる気候のサイコロは、場合によっては深刻な事態を招く。
なぜ気候変動は経済問題なのか
たいていの人は地球温暖化を、熱波や氷床の融解、干ばつ、暴風雨を引き起こす自然科学の問題として捉えている。しかし実は、温暖化の究極の原因も解決策も、社会科学の領域にある。
気候変動の経済学はシンプルだ。人間の活動のほぼすべては、化石燃料の燃焼につながっている。その結果、大気中に二酸化炭素が排出される。それが長年にわたって蓄積され、地球の気候を変え、深刻な被害をもたらす様々な変化を引き起こす。
・「外部性」の問題
問題は、二酸化炭素を排出する人がその特権の対価を支払うことも、排出によって害を被った人がその代償を受けることもないという点だ。
例えば、我々はレタスを買う時、生産過程で生じたコストを支払い、農家と小売業者は労働の対価を得る。しかし、生産過程で、畑に撒く水を汲み上げる、運搬用トラックに燃料を供給するといった形で化石燃料を使う場合、ある重要なコストがカバーされていないことになる。排出された二酸化炭素によって生じる損失だ。
こうしたコストは市場取引の外にあるため、経済学者たちは「外部性」と呼ぶ。外部性は、第三者に損害を与える、経済活動の副産物だ。
我々の生活には、多くの外部性が存在する。その中でも、特に厄介なのが地球温暖化だ。というのも、それが地球規模だからだ。
地球温暖化、通貨危機、サイバー戦争、核拡散など、今日、人類が直面する深刻な問題の多くは本質的に地球規模で、市場も各国政府もそれを制御することはできない。
・市場で生じた歪みを市場は解決できない
経済学は、外部性についてのある重大な事実を指摘している。それは、市場で生じた歪みを市場が自動的に解決することはないという点だ。
二酸化炭素のような負の外部性の場合、規制のない市場は二酸化炭素の排出による外部費用に価格を設定しないため、過剰排出につながる。