2019年4月号掲載
論語のこころ
- 著者
- 出版社
- 発行日2015年9月10日
- 定価1,034円
- ページ数269ページ
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著者紹介
概要
孔子やその弟子たちの言行を収めた『論語』。本書は、中国哲学史の碩学が、時代を超えて読み継がれる同書から120余の章段を選んで体系化し、平易に解説したものである。何よりも徳性(人格や人間性など)が重要、老年期には「得(物欲)」に用心せよ、等々。基本的道徳が軽視されがちな今日、『論語』の教えから学ぶことは多い。
要約
『論語』の名句
『論語』は、人間をありのままに見透し、人間にとって幸福とは何かという視点に基づいて、道徳を論じた書である。その内容は決して難しくないし、実行できるものばかりである。
名句の前後にあった物語が削ぎ落とされた
『論語』の大部分は、孔子と弟子、あるいは弟子たちの間の話が語り継がれ、書き継がれたものだ。孔子の頃は話し言葉による表現が中心だったから、文献の形式は対話・語録・講義といった感じのものである。
残念ながら、『論語』の記述には、その場の前後の話が時間とともに削ぎ落とされたものが多い。
例えば、「過ちて改めず、是を過ちと謂う」という言葉。この名句の前後に、何か物語があったはずである。それがどのようなものであったかは、今のところわからない。
しかし、このことは逆に、その名句が生まれた文脈とは関係なく、自由にその句だけを使えることとなり、適用範囲が広くなる。
誤用される名句・名言
短い名句が生まれた前後の事情が不明なので、真の意味は何だったか、後世の我々は誤解しているかもしれない。というのも、前後の事情がわかっている時でも誤用することが多いからだ。
例えば、「過ぎたるは猶及ばざるがごとし」。これは「オーバーなこと(過ぎたる)はだめだ(及ばず)」という意味で使われることが多い。
しかし、それは誤用である。これは「過ぎたる(過剰)は及ばず(不足)と同じであって、両方ともよろしくない〔だからバランスのとれた中庸がよい〕」という意味である。けれども、「及ばず」という言葉が、不足という事実を指すのではなく、劣っているという価値を示すと思う人が多いので、誤用が通用している。
誤用を避けるためには、原文(書き下し文)を読み、前後の文脈を知ることだ。ただし、生まれた事情を示す言葉がない短い句の場合はやむを得ない。その短い言葉の広がりを、静かに味わおう。
自分の幸せだけでいいのか
孔子は人間を根底から見すえた人である。その人間観は、冷徹とさえいってよい。