2019年8月号掲載
「つながり」の創りかた 新時代の収益化戦略 リカーリングモデル
著者紹介
概要
売って儲ける「売り切りモデル」から、課金などで継続的に収益を得る「リカーリングモデル」へ ―― 。近年、広がりを見せる、新たなビジネスモデルを紹介。今話題のサブスクリプションをはじめ、様々なリカーリングモデルの特徴を述べ、この方式に転換する上で欠かせない、顧客との「つながり」の創りかたを提案する。
要約
売り切りからリカーリングへ
ものをつくり、大量に売って利益を得る旧来型のビジネスモデル ――「売り切りモデル」が、終焉を迎えようとしている。
売り切りモデルとは、あるプロダクト(製品)を販売した時に利益を確定する収益化モデルのこと。このモデルの問題は、利益獲得のチャンスが1回であることだ。販売した時点で、それ以上ユーザーに深入りしないからだ。これが、ものづくり企業やもの売り企業の利益が少ない理由である。
利益が継続する「リカーリングモデル」
一方、この真逆のビジネスが登場している。十分に利益を獲得し、しかもその利益が継続する。そんな理想的なビジネスモデルが、「リカーリングモデル」である。これは、リカーリングレベニュー(継続的に収益が入ってくる「状態」を指す)を実現する収益化モデルのことだ。
その筆頭が「サブスクリプション」。購入ではなく、契約してもらう。契約後は月額や年額で課金する期間での定額制や、利用量に応じて課金する従量制などの課金形式で、継続的に利益を得る。
その成功例が、アドビシステムズだ。2013年に売り切り型のソフトウェアを、月額定額で使い放題のサブスクリプションに全面移行。その結果、売上、利益ともに過去最高を更新し続けている。
リカーリングモデルに不可欠な「つながり」
では、リカーリングモデルへ移行するには、どうすればよいか。課金の変更だけではうまくいかない。ビジネスモデルの本質を捉える必要がある。
ビジネスモデルとは、「ユーザーに価値を与えながら、企業が利益を得る仕組み」である。この定義をもとにリカーリングモデルを見れば、これは収益化(マネタイズ)の仕組みにすぎない。
その前提には、必ずユーザーへの価値提案が存在している。売り切りモデルでも、ユーザーに何らかの価値を提案してきた。ただし、それはプロダクトそのものの提案だった。
リカーリングモデルの価値提案は、プロダクトの提案では不十分だ。ユーザーのジョブ(用事)を見極め、それを達成するために伴走しないといけない。つまり、プロダクトから「つながり」へと価値提案を改めねばならない。ユーザーと継続的な関係を結ぶから、収益が継続するのである。
リカーリングモデルのバリエーション
リカーリングモデルには、様々なものがある。