2022年3月号掲載

現代語訳 学問のすすめ

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著者紹介

概要

幕末から明治を生きた啓蒙思想家にして、慶應義塾の創設者である福沢諭吉。義塾を本拠地として教育や著述など多彩な活動をした彼が、明治維新直後の1872年に刊行した『学問のすゝめ』は、驚異的な反響を呼び、日本を躍進させる一助となった。時代を経て今日まで読み継がれるこの「福沢実学」を、平易な現代語訳で紹介する。

要約

天は人の上に人を造らず

 「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」といわれている。つまり、天が人間を生み出した時から、万人は皆同じ地位・資格を持ち、生まれながら平等であるということだ。

 しかし、広く社会を見渡すと、賢愚・貧富、さらに貴族や身分の低い人など、人間の暮らしにはまさに雲泥の差がある。なぜなのか?

勉強したかしないかの差は大きい

 その理由は明らかである。『実語教』という修身の本に、「人、学ばざれば智なし、智なき者は愚人なり」とある。つまり、賢人と愚人の違いは、学ぶか学ばないかによって決まるのである。

 世の中には難しい仕事もあれば、やさしい仕事もある。難しい仕事をする人は偉い人であり、簡単な仕事をする人は身分の低い人だという。

 概して精神的な苦労のいる仕事は難しく、肉体労働はやさしいとされる。だから、医者・学者・政府の役人・実業家などは身分が高く、偉い。

 そうした人は、当然家も富み、下級の者からすれば、とてもかなわないように思える。だが、その本を考えると、原因は1つしかない。

 それはただ、その人に学問の力があるかないかによって決まる。従って、学問に励み、物事をよく知った者は偉くなり、富み栄える。無学な者は、貧しく、身分の低い人間になるのである。

実生活に「役立つ学問」を最優先する

 では、我々が学ぶべきものは何か?

 ほかにもある。例えば、地理学、物理学、歴史、経済学、倫理学だ。これらは誰もが学ぶべき“実学”であり、身分・貧富の差もなく、全ての人間が身につけて当然の学問である。

 この学問が身についてこそ、それぞれの立場で自分の務めを果たし、家の仕事を営むことができる。それが「一身の独立」であり、ひいては家の独立、国家の独立につながるのである。

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