2022年5月号掲載
ニュースの数字をどう読むか ―― 統計にだまされないための22章
Original Title :HOW TO READ NUMBERS
- 著者
- 出版社
- 発行日2022年2月10日
- 定価968円
- ページ数260ページ
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著者紹介
概要
犯罪件数、新型コロナの感染者数、がんのリスク…。ニュースには、数字があふれている。しかし、素直に信じるのは禁物。ともすると、それらは報道内容に沿った、選択されたもので、私たちをミスリードする。では、どうすれば、だまされないのか。数字の見極め方を、具体例を挙げ、わかりやすく伝授する。難しい数式は抜きで!
要約
数字はどうやって人を欺くのか
ニュースは数字で語られることが多い。犯罪件数の増減、国の経済の縮小や拡大、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の死亡者数…。
私たちをとりまく世界を理解するためには、数字がどのように作られ、使われ、そして間違うのかを理解する必要がある。そうでなければ、誤った判断をしてしまう ―― 。
感染症対策で重視する数字は1つだけ?
COVID-19によって世界中の人々は、超特急で統計の概念を教えこまれた。
私たちがはじめに理解しなければならなかった数字は、“R”(reproductive number)だった。Rとは再生産数のこと。感染症疫学では、1人の感染者から平均して何人が感染するかを指す。ある感染症のRが5であれば、1人の感染者から平均して5人が感染するということになる。
公衆衛生政策の目標の1つは、ワクチン接種や行動変容によりRを下げることである。Rが1より小さければ感染は縮小していくからだ。だから、ウイルス感染症のルールはたった1つ、「Rが1より大きくなるのは良くない」と考えがちだ。
だが、これはもう少し複雑な話である。
生態学的誤謬
有名な例を挙げよう。
1973年9月、男性8000人と女性4000人がカリフォルニア大学バークレー校の大学院を受験し、男性の44%、女性の35%が合格した。
しかし、データを詳しく見ると、ほとんどどの学部でも、合格率は女性志願者の方が高かったのだ。最も人気のある学部では、女性志願者の82%が合格したのに対して男性は62%、2番目に人気のある学部では、女性の68%が合格したのに対して男性は65%だった。
何が起こっていたかというと、女性は競争倍率のより高い学部を受験していたのだ。ある学部では、933人の志願者のうち女性は108人で、女性の82%、男性の62%が合格した。一方、別の学部では714人の志願者のうち女性が341人を占め、女性の7%、男性の6%しか合格しなかった。
しかし、この2つの学部を合わせると、女性449人、男性1198人が志願し、うち女性111人(25%)、男性533人(44%)が合格したことになる。どちらの学部も合格率は女性の方が高かったが、合計すると低くなってしまったのである。