2023年2月号掲載
クオンタムマーケティング 「プライスレス」で世界的ブランドを育てたCMOが教える最新マーケティング論
Original Title :QUANTUM MARKETING (2021年刊)
- 著者
- 出版社
- 発行日2022年12月19日
- 定価2,420円
- ページ数326ページ
※『TOPPOINT』にお申し込みいただき「月刊誌会員」にご登録いただくと、ご利用いただけます。
※最新号以前に掲載の要約をご覧いただくには、別途「月刊誌プラス会員」のお申し込みが必要です。
著者紹介
概要
人工知能(AI)、拡張現実(AR)、5G接続…。今、先端テクノロジーが消費者の生活を一変させている。そうした環境下でマーケターに求められる新たな方策が「クオンタム・マーケティング」だ。従来のアプローチとは次元の異なるこの手法について、マスターカードCMO(最高マーケティング責任者)が豊富な事例を交え解説する。
要約
第5パラダイムがやってくる
マーケティングの世界では、これまでに4度のパラダイムが起きている。
-
- ①プロダクト・マーケティング
- ②エモーショナル・マーケティング
- ③データドリブン・マーケティング
- ④デジタル&ソーシャル・マーケティング
そして今、私たちは第5のパラダイムを迎えている。それが「クオンタム・マーケティング」時代だ。この時代には人工知能(AI)や5Gなど、新たに出現したテクノロジーによって、消費者生活の変質が急速に進んでいる。それに伴い、マーケターはマーケティングのアプローチそのものを考え直す必要に迫られるようになった。
「クオンタム」とは?
「クオンタム」とは、科学用語としては「従来のアプローチで説明できない影響」を意味する。さらに、「測定不可能なほど著しい速さや量の変化」という意味も持つ。どちらも第5パラダイムのマーケティング、すなわちクオンタム・マーケティングを言い当てている。
AIの圧倒的な破壊力
第5パラダイムで、圧倒的な破壊力を発揮するのはAIだろう。
例えば、AI以前、私たちは相関分析や原因分析を行っていた。どのプロモーションを実施すれば、どのくらい割引すれば売上を最大化できるか知るためだ。そしてその手法として、調査、テストマーケティング、要因分析などが用いられた。
しかし、通常これらは一定の層(共通する特性をもった消費者たち)を対象に行われる。
例えば、ある企業が10%、20%、30%という複数の値引き率を設定して、どれが最も有益かを調べるとする。仮に20%の値引きで売上が8%増え、30%の値引きで売上が10%増えたら、20%値引きの方が経済効果は高いと結論づけられる。こうして最適な値引き率にたどり着けるわけだ。
ただし忘れてはならないのは、ここでたどり着いた最適値はある層においてのものであり、その層に含まれる個々人のものではないということだ。例えば、私は20%の値引きで最も反応があったと企業が判断した集団に属しているとする。しかし、私個人は10%の値引きに対して前向きに反応していたので、企業にしてみれば私に余分な値引きを行ったと言える。
一方で、AIを使えば、企業は私の過去の行動、その商品カテゴリーにおいての購買習性などを分析できる。そうすることで、私の値引きに対する考え方を知る手がかりが得られるのだ。こうした分析はリアルタイムで実施されるので、企業は私という個人に特化した、私にとってよいオファー、企業にとってもよいオファーを提示できる。
第5パラダイムでは、腕時計から靴、車、ゴルフクラブに至るまで、あらゆる物にセンサーが付いている。それらは秒単位でデータを集め、すべてのデータはAIに注ぎ込まれる。そして、そこから驚異的なインサイトがはじき出される。マーケターは、それらのインサイト群に基づいてリアルタイムで行動すれば成果を挙げられるのだ。