2023年12月号掲載
顧客の「買いたい」をつくる KPIマーケティング
著者紹介
概要
顧客に“刺さる”マーケティング戦略は、どうすれば作れるのか? この問いに、コンサルタントが答えた。ポイントは、顧客に「あなたから買いたい」と思ってもらえる「強み」を作り、その強みを「伝え切る」こと。これを実行するためのノウハウと、売上につながるKPI(重要業績評価指標)の設定の仕方について詳述する。
要約
戦略の「急所」が決めるKPI
KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)とは、「それさえ追いかけていけば結果が出る指標」である。マーケティングや営業においては、主な「結果」は「売上」だ。
売上を上げることは、企業にとって非常に重要な目標である。だから、多くの企業は売上を主要な評価指標(KPI)としている。
しかし、ここで大切なのは、「売上を追っても、売上は上がらない」ということだ。売上とは、「お客様が買うという決断をした結果」として上がってくる数字である。お客様が「買いたい」と考えれば、売上はその結果としてついてくるのだ。
となると、追いかけるべき数字は売上ではなく、「買いたいを作れた数」である。それが「追うべき指標」であるKPIとなるべきなのだ。
では、どうすれば「買いたい」を作れるのか?
買いたい作りは価値作り
お客様が商品・サービスなどを「買いたい」と思うのは、その商品・サービスがお客様に「うれしさ」「価値」をもたらすからである。
有名なのが、マーケティングの大家、セオドア・レビットの「ドリルを売るには穴を売れ」という命題である。お客様が買いたいものは、ドリルという「モノ」ではなく、ドリルがあけてくれる「穴」という価値なのだ。
どんなドリルを作るか、売るか、を考える前に、お客様がどんな材質のものに、どんな直径の、どんな深さの穴をあけたいか、という「価値」を考え、それに合ったものを作る・売ることでお客様がドリルを「買いたい」と思うわけである。つまり、「買いたい作りは価値作り」なのだ。
「強み」が作る「あなたから買いたい」
しかし、「買いたい」を作るだけではまだ不十分である。なぜなら「競合」がいるからだ。お客様に「あなた(自社・自分)から買いたい」と思ってもらうためには、2つの条件を満たす必要がある。
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- ①「強み」(あなたから買いたい理由)が実際に存在する
- ②「強み」(あなたから買いたい理由)がお客様に伝わっている
従って、「あなたから買いたい」を作る方法は次の2つになる。
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- 方法1:自社の商品・サービスの「強み」を作る・強化する
- 方法2:「強み」をお客様に伝え切る
「あなたから買いたい」を作って販売数を6倍に
「あなたから買いたい」を作って、実際に成功しているのが、(株)東邦が販売する「ウタマロ石けん」だ。2017年に1271万個を販売。10年前から販売個数は約6倍に拡大している。