2025年3月号掲載

AI・機械の手足となる労働者 デジタル資本主義がもたらす社会の歪み

Original Title :The Digital Factory:The Human Labor of Automation (2022年刊)

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著者紹介

概要

アマゾンやグーグルなどの「プラットフォーマー」は、労働市場を大きく変えた。彼らがもたらす仕事は、多くが標準化されて訓練不要、短時間で柔軟な労働が可能だ。一方、労働者はアプリなどデジタル技術で管理され、いつクビになるかもわからない。かつての工場労働を思わせる、そんな「デジタル工場」の実態を明らかにする。

要約

工場を去る労働者

 グーグルのシリコンバレー本社「グーグルプレックス」。広大な敷地にはいくつもの建物が立ち、それらの間には緑地やレクリエーション施設が設けられている。ここでは、無料のレストランやジム、映画館なども利用可能だ。

 グーグルはこの職場を、「自由」「創造性」「遊び心」などの言葉で表す。建物は社員が交流し合うように設計され、一斉退社もシフトもなく、社員が自由に出入りしているように見える。

 では、これがデジタル資本主義における労働の真髄なのだろうか? 答えは「ノー」だ。

グーグルで働く「黄色バッジ」たち

 一等地に建てられたグーグルの本館の隣には、目立たないビルがある。そこで働く人々は、黄色いバッジで区別されている。

 この「黄色バッジ」たちは、2010年にグーグルが発表した、現存するすべての書籍をデジタル化するというプロジェクトのために働いている。

 彼らはシフト制で働く。仕事は、ページをめくることと、機械のスキャンボタンを押すことだ。この労働者グループには、無料の食事やジムといった社員特権が与えられていない。また、キャンパス内を自由に移動することも許されていない。

 グーグルの従業員には、書籍のスキャン作業者のようなTVC(臨時社員〈テンプ〉、供給業者〈ベンダー〉、請負業者〈コントラクター〉の略)と呼ばれる10万人以上の労働者がいる。

 これらの委託業者は、例えばグーグルのデジタルアシスタントを訓練するために会話の書き起こしを行ったり、ストリートビュー用の写真を撮影するために車を運転したりしている。彼らのような労働者は現代のデジタル資本主義において重要な役割を果たしているが、見落とされがちだ。

デジタル工場へ

 デジタル技術は、見た目はまったく違っていても、20世紀初頭のテイラー主義(科学的管理法。1900年代初めに米国の経営学者フレデリック・W・テイラーによって確立された管理理論で、作業の標準化・最適化などを特徴とする)の工場に面白いほど似通った労働制度を確立・強制している。

 そうした労働の現場は、アルゴリズムという魔法の背後に隠されていることが多く、自動化されていると思われていても、実際には人間の労働力に大きく依存している ―― それは事実上「デジタル工場」となっているのだ。

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