2025年3月号掲載

ブッダのことば ――スッタニパータ

Original Title :SUTTANIPĀTA

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概要

仏教の開祖、ゴータマ・ブッダ。その教えを説いた仏教書は数多く存在する。それらの中でブッダの実際の言葉に最も近く、最も古い聖典が『ブッダのことば(スッタニパータ)』だ。そこには、発展する前の素朴な、最初期の仏教の姿が示されている。人間として正しく生きる道を説いたこの書を、読みやすい訳文で紹介する。

要約

最も古い仏教書『スッタニパータ』

 『スッタニパータ』は、仏教の開祖であるゴータマ・ブッダ(釈尊)の姿に最も近く迫りうる書の1つである。

 「スッタ」とは「たていと」「経」の意味であり、「ニパータ」は集成の意味である。『ブッダのことば(スッタニパータ)』は、仏教の多数の諸聖典のうちでも最も古いものであり、釈尊の言葉に最も近い詩句を集成した聖典である。

 

欲望

 欲望をかなえたいと望んでいる人が、もしもうまくゆくならば、彼は実に人間の欲するものを得て、心に喜ぶ。

 欲望をかなえたいと望み貪欲の生じた人が、もしも欲望をはたすことができなくなるならば、彼は、矢に射られたかのように、悩み苦しむ。

 足で蛇の頭を踏まないようにするのと同様に、よく気をつけて諸々の欲望を回避する人は、この世でこの執著をのり超える。

 人が、田畑・宅地・黄金・牛馬・奴婢・傭人・婦女・親族、その他いろいろの欲望を貪り求めると、無力のように見えるもの(諸々の煩悩)が彼にうち勝ち、危い災難が彼をふみにじる。それ故に苦しみが彼につき従う。あたかも壊れた舟に水が侵入するように。

 それ故に、人は常によく気をつけていて、諸々の欲望を回避せよ。船のたまり水を汲み出すように、それらの欲望を捨て去って、激しい流れを渡り、彼岸に到達せよ。

洞窟についての詩句

 窟(身体)のうちにとどまり、執著し、多くの(煩悩)に覆われ、迷妄のうちに沈没している人、 ―― このような人は、実に〈遠ざかり離れること〉(厭離)から遠く隔っている。実に世の中にありながら欲望を捨て去ることは、容易ではないからである。

 欲求にもとづいて生存の快楽にとらわれている人々は、解脱しがたい。他人が解脱させてくれるのではないからである。彼らは未来をも過去をも顧慮しながら、これらの(目の前の)欲望または過去の欲望を貪る。

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