ロスチャイルド家は300年にわたって続く欧州のユダヤ財閥です。その家はフランクフルトのユダヤ人で、金融・両替商だったマイヤー・アムシェル・ロートシルトに始まります。(中略)
マイヤーは5人の息子を1カ所には集めず、フランクフルト、ウィーン、ロンドン、ナポリ、パリに独立採算の支店を持たせました。ヨーロッパ全土に商売を分散させたのです。
解説
ユダヤ人国際弁護士の石角完爾氏は、このロスチャイルド家の話と対比して、毛利家の「3本の矢」の説話を紹介する。
戦国大名の毛利元就がある日、3人の息子を呼んだ。まず1本ずつの矢を折らせたところ、簡単に折れた。次に、3本を束ねて折らせようとしたが折れない。そこで元就は、「3本まとめれば折れない。だから、兄弟力を合わせよ」と諭した。
これは、ロスチャイルド家とは逆の発想である。
ユダヤ人は、「3本まとめても、折れてしまうような大事件が起こった場合にどうするか」と考える。つまり、常にリスク分散を考えるのだ。
日本では、不運や困難に直面するかもしれない時、「山より大きな猪は出ない」と自分に言って聞かせ、気持ちを落ち着かせようとする。
しかし、実際に山ほどでなくても、とてつもなく大きな猪が出てくれば混乱してしまうだろう。
ユダヤ人ならば、不安にかられるだけでも損だと考え、「猪は必ず飛び出してくる」と事前予想を立てる。かつ、猪の大きさを大・中・小に分け、大の猪が出てくればさっさと撤退することを事前に決めておく。