イギリスでは、子どもたちが横断歩道を渡る際、大人たちは特に「ゆっくり歩きなさい」と指導します。日本ではどうでしょう。(中略)子どもたちが横断歩道を渡る時、「早く早く」と誘導しています。
これは、リスクに対する考え方の違いからくるものです。
解説
日英のリスクに対する考え方は異なる、と国際政治学者の中西輝政氏は言う。
例えば、日本では、道路を急いで渡ることで、リスクにさらされる時間を少しでも短くしようと考える。
一方、イギリスでは、道路を横切ることには元々リスクがあり、急いで渡ればつまずきやすいなど、さらに危険性が増すと考える。そうした余計なリスクを減らし、走ってくる車に注意しながら、落ち着いて横断させようという考え方だ。
つまり、日本人は時間という軸に非常に神経質だといえる。これに対し、注意力や精神の平衡ということに価値を置くのがイギリス流である。
また、日本では「今日できることは明日に延ばすな」というが、イギリスでは「明日やってもいいことを今日急いでやってしまおう」とはしない。
これは、イギリス人の1つの哲学だ。
いいアイデアが浮かばない時は、そこで悩むのをやめ、翌日にもう一度考えてみる。すると、いいアイデアが浮かぶことがある。
イギリス人は、全てにこの考え方を当てはめる。時間を置いて見たら、全く別のものが見えてくるという認識である。
イギリス人は重要な決断を迫られても、決して即断しない。「情報は早く、行動は遅く」。これが彼らの行動指針である。情報を取るのは早い方がいいが、決断は急いで下さず、少し間を置くのだ。
即断した場合、その時の精神状態によって誤った判断をしてしまう危険性もある。しかし、例えば一晩置くことで、より良い状態で決断できる可能性が高まる。また、いたずらに一時的な情報に踊らされるという可能性も低くなるのである。