生きていくうえで大切なものに値段をつけると、それが腐敗してしまうおそれがある。(中略)子供が本を読むたびにお金を払えば、子供はもっと本を読むかもしれない。だがこれでは、読書は心からの満足を味わわせてくれるものではなく、面倒な仕事だと思えと教えていることになる。
解説
世の中には、お金で買えないものがある。にもかかわらず、今や、あらゆるものが売りに出されている。インドの代理母による妊娠代行、アメリカ合衆国へ移住する権利…。
世の中は「すべてが売り物となる社会」に向かっている。これは懸念すべきことだ。その理由は2つある。
1つは、「不平等」に関わるものである。すべてが売り物となる社会では、貧しい人の方が生きていくのが大変だ。この数十年間は、貧困家庭や中流家庭にとって厳しい時代だった。貧富の差が拡大しただけでなく、あらゆるものが商品となったせいで、お金の重要性が増し、不平等の痛みが一層ひどくなったのだ。
そしてもう1つが、「腐敗」に関わるものである。上記の「読書」の例のように、生きていくうえで大切なものに値段をつけると、それが腐敗してしまうおそれがある。お金では買えない大切な価値が、市場価値に締め出されてしまうのだ。