人間は、基本的生活にかかわる欲求を満たすと、あるいはそれ以前の段階であっても、激しい欲望をもつようになる。だが、何が欲しいのかは自分でもわからない。なぜなら、人間は欲しがる存在だからだ。
人間は、自分にはないと感じる、自分以外の誰かがもっているはずのものを欲しがる存在なのだ……。
―― ルネ・ジラール
解説
現代社会は、昔に比べて十分豊かになった。にもかかわらず、我々は物質的な繁栄をこれまで以上に追求している。
人間の欲望には驚くべき順応性がある。文芸批評家ルネ・ジラールが述べるように、人間は自分以外の誰かがもっているはずのものを欲しがる。その欲望には際限がなく、すべての富を消費しようとするのだ。
経済成長は目的をもたらす手段ではなく、むしろ生活の苦悩から人間を救い出す宗教のような役割を果たす。事実、数億人もの人々が経済成長という神を崇め、その結果、地球上の生命や環境が危険にさらされている。