コンピューターが数学の言葉だけを使って動いている限り、予見できる未来にシンギュラリティが来ることはありません。
解説
今、「シンギュラリティ」という言葉がもてはやされている。これは、人間の知能と同等レベルのAI(人工知能)が、自分自身よりも能力の高いAIを作り出すようになる地点のことである。
だが、数学者の新井紀子氏は「シンギュラリティは来ない」と述べ、次のように指摘する。
―― 実は、AIはまだどこにも存在していない。
人工知能と言うからには、人間の知能と同等レベルの知能でなければならない。しかし、基本的にコンピューターがしているのは、計算(四則演算)である。計算するということは、認識や事象を数式に置き換えるということ。つまり、AIが人間と同等の知能を得るには、私たちの脳が認識していることを全て数式に置き換えることができなければならない。
今のところ、数学で数式に置き換えることができるのは、論理的に言えること、統計的に言えること、確率的に言えることの3つだけである。そして、私たちの認識を、全て論理、統計、確率に還元することはできない。
今のAIの延長では、あるいは今の数学では、人間と同等レベルの知能を持つ「真の意味でのAI」はできないのである。