プロのカウンセラーの会話が一般の人の会話と違う点は、沈黙と間を多用することです。
解説
日常的な会話では、間が入ると、落ち着かなくなったり、気まずくなったりする。沈黙となると、なおさら場が重苦しくなる。
一方、カウンセリングの会話においては、沈黙が重要になる。この場合の沈黙は、深刻な悩みを抱えている相談者が考えを深め、自分を理解するために必要な時間といってよい。
沈黙や間は、会話が途切れているのではなく、「心の中の会話」がずっと続いているのである。
こうした沈黙や間は、聞き手にもなければならない。聞き手が必要に応じて沈黙や間を入れられるようになると、話し手の会話は続く。
そして、沈黙の後に聞き手が意見をはさむと、会話の主導権は話し手から聞き手に移る。この時に、話し手が沈黙や間を入れると、今度は聞き手の方がしゃべらなければならなくなる。すなわち、主客が転倒するのだ。
主客が転倒すると、場の雰囲気が変わる。この変化には、話し手と聞き手の沈黙に対する迫力の差が関係する。
聞き手の沈黙と間の迫力。それを生むのは、聞き手の度量である。これは、話し手の話す内容が深刻であればあるほど、必要とされるものだ。
話し手と心がつながっていて、迫力のある沈黙や間が入る会話ができるようになれば、「上級の聞き上手」になった証拠といえる。