2005年11月号掲載
リーダーシップに「心理学」を生かす
Original Title :Harvard Business Review Anthology:A Psychological View of Leadership
- 著者
- 出版社
- 発行日2005年9月1日
- 定価2,420円
- ページ数294ページ
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概要
欧米では、複雑なビジネス上の問題解決に、心理学が積極的に応用されている。それは、組織というものが、不可解な人の「心」の集合体だからだ。組織内の齟齬をなくし、物事をスムーズに行うには、人の心を理解しなければならない。本書では、リーダーシップに関して、著名人を例に挙げて解説するなど、非常に興味深くリーダーの心理学を教えてくれる。
要約
リーダーシップの不条理
リーダーシップについて書かれたビジネス書の多くは、ある問題を抱えている。
それは、「リーダーとは理性的な存在である」という前提に立っていることだ。
これらの書は、読者にアドバイスを与えるべきものである。そうである以上、リーダーの不条理な面や、精神的な脆さに焦点を当てることは、ほとんどない。
ところが、不条理は人間の性格とは切っても切れない関係にある。
経営幹部たちの精神分析をしてみれば、彼らが常に理性的に行動しているわけではないことがわかる。彼らの精神状態は極めて複雑で、何かに強く駆り立てられている。
通常、その状態は、大人になっても引きずっている子供の頃の行動様式と経験が原因である。
例えば、成功したリーダーの家庭環境には、ある共通点が見られる。その1つは、成功した男性リーダーの多くは、精神的な支えとなる強い母親を持ち、父親の方はどちらかというと、よそよそしくて存在感が薄いということだ。
ヴァージン・アトランティックのリチャード・ブランソンの母親は、「リチャードはいつか首相になることが私にはわかる」と皆に話していたという。決心しさえすればできないものはないと、彼に信じ込ませたのも母親だった。
また、多くのリーダーに共通するのは、「傷ついたナルシシズム」を繕おうとすることである。
傷ついたナルシシズムとは、よそよそしい親、または甘やかしすぎた親から、幼年期において自尊心に受けた打撃である。
一般的にナルシシズムを傷つけられた人間は、人から認めてもらうことに飢えている。彼らは常に自分を称賛してくれる聴衆を求めているのだ。