2007年7月号掲載

起業と倒産の失敗学

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著者紹介

概要

成功の頂点に上りつめたベンチャー企業が、突如として倒産する…。本書では、様々な失敗事例から「失敗の本質」をまとめ上げた。そこから導けるのは、成功のカギは過去の失敗の学習にある、ということ。著者は言う ── 日本社会は、なぜ「せっかくの失敗を活かす」ことを許容できないのか。それらを社会全体で有効活用しないのは一大損失である、と。

要約

失敗に学べば同じ轍は踏まない

 日本経済が大きな転換期に差しかかっている今、もはや従来のように成功事例に学ぶだけでは通用しない。

 では、何の手がかりもないのかと言えば、そうではない。先人たちが残してきた「失敗」という財産がある。企業の最大の失敗は倒産であり、倒産事例には同じ失敗を繰り返さないための教訓が詰まっている。

 例えば、今や1部上場企業の吉野家ディー・アンド・シーも、1980年に倒産を経験している。

 同社の安部社長は倒産の原因について、「売上と客数を減らそうと思えばこれをやればいいという見本みたいなことを全部やった」と語っている。

 例えば、牛肉価格が高騰したため、原料を生肉から安価なフリーズドライ肉に変更し、タレをパウダー化し、米も安いものに切り替えたりした。

 こうして味が落ちた吉野家から客足は遠のき、売上は急減、赤字が膨らんだ。そんな吉野家を銀行が見限った、というのが倒産への図式である。

 しかし、再起するのも早かった。87年には債務を完済。90年には株式を公開するまでに至った。

 安部社長はこう語っている。「あの失敗のデータベースは、今も大切にしている。(中略)失敗の条件についてだけは、100%学習した」。

 多くの企業が、失敗を避けようとして「マニュアル」を作成している。会社によっては、してはいけないことを書いた「べからず集」のような形になっているところもある。

 しかし、失敗学の見地からすれば、どちらもあまり役に立たないというのが実情である。

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