世の中では、失敗を見る時、「原因」と「結果」だけを見て、失敗の原因を捉えようとする。それでは、的確に原因を分析するには不十分である。
 失敗体験を、次に利用できるように分析するためには、原因を「特性」と「要因」とに分けて考えることが不可欠である。

解説

 失敗を繰り返さないためには、失敗から学ぶ必要がある。その際、非常に重要なのは、失敗原因の捉え方である。
 失敗学の権威、畑村洋太郎氏が述べるように、そのカギは、失敗の原因を「特性」と「要因」に分けて考えることである。
 特性とは、企業体のような、あるシステムが持っている「失敗を起こす特性」である。その特性に対して、何らかの要因が働くから「結果」が生じる。そう考えると、失敗の意味が明確に見えてくる。
 例えば、雪印乳業の食中毒事件の場合、まず「特性」として同社の企業体質があった。それは、「儲け優先でどんなことでもやる」「自分に都合の悪いことは見ない」というものだった。
 この特性に対して、「牛乳が安くてあまり儲からない」という要因があった。そのため、一度出荷された牛乳が戻ってきた時に、「検査もせずに再利用する」「毒素の入った材料を平気で出荷する」といった結果を引き起こしたのだ。
 そう考えると、システムが持つ特性が変わらない限り、同種の要因があれば失敗は繰り返される、ということがわかる。
 このように、失敗原因の特性と要因が把握できると、「どのような結果を生じるのか」ということが推測できるようになる。
 ただし、失敗の結果は目に見えるが、特性や要因は目に見えない。そこで、結果から特性や要因を逆演算して推定していくことが必要になる。
 組織としてこうした失敗原因の捉え方ができると、同じ失敗を繰り返すことはなくなっていく。これが「強い会社」を作っていくプロセスである。

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