2015年6月号掲載
顧客ロイヤルティ戦略:ケースブック
概要
顧客が商品を再び買ってくれたり、顧客の声を基にヒット商品を出したり。「顧客ロイヤルティ」を向上させると、企業は様々な恩恵を享受できる。その意味で、事業運営の最終目的ともいえる顧客ロイヤルティを、理論と事例の両面から解き明かす。まず顧客ロイヤルティのメリットや向上策などを解説、続いてコメダ珈琲をはじめ、示唆に富む企業事例が紹介される。
要約
顧客ロイヤルティ向上のメリット
一般に、顧客満足が高まれば、顧客と企業の間に密度の高いロイヤルな関係が発生する。
それは、顧客の再購買や、高価格の受け入れを促し、口コミで潜在顧客を呼び込んでくれる。
これらは、企業収益を大きく高めてくれることになる。その意味で、顧客ロイヤルティこそが事業運営の最終目的と言っても過言ではない。
企業が顧客ロイヤルティを向上させることのメリットをまとめると、以下のようになる。
①再購買
自社の顧客が、自社の製品・サービスを気に入って次回も再び買ってくれる。
②クロスセル
自社に対する顧客満足度が高ければ、他の自社製品を併せて購入してもらえる可能性が高い。
③実現価格向上
自社製品に対する顧客ロイヤルティが高まると、その製品・サービスの価格は高止まりする。顧客が他社製品では十分に満足できないために、価格競争になりにくいためである。
④顧客ニーズの反映
これは全ての製品・サービスに当てはまるわけではないが、一部の企業は顧客の声を商品開発に反映させることで、ヒット商品を生み出している。
⑤新規顧客開拓
最近、既存顧客の製品・サービス体験を、新規顧客の獲得に上手につなげる企業が出てきた。
例えば化粧品会社のDHCでは、商品同封のハガキを通じて顧客の声をコミュニティペーパーの形にまとめ、顧客と企業との一体感を高めている。これを見て自分も参加したいと考え、DHCの化粧品を購入する新規顧客も多いという。
⑥マーケティングコスト削減
顧客ロイヤルティが高くなれば、コスト削減につながる。一般に既存顧客に対する営業コストは新規顧客獲得の数分の1から数十分の1とされる。既存顧客であれば、自社製品の認知などは不要だ。従って、既存顧客のロイヤルティが高くなるほど需要創造コストは下がる。また、クロスセルができれば、一度の営業努力で多くの売上が上がるから、単位当たりコストは下がる。