2017年5月号掲載
考え方 人生・仕事の結果が変わる
著者紹介
概要
「人生は『考え方』によって形づくられる」。当代随一の経営者・稲盛和夫氏が、人間として正しいことを正しいままに貫くことの大切さを綴った。大きな志を持つ、努力を惜しまない…。善き考え方を持つことで、人生を好転させ、困難を克服してきた氏が、来し方を振り返りつつ、人生の結果を大きく左右する考え方について語る。
要約
素晴らしい人生をもたらす羅針盤
私はこれまで仕事に追われ、仕事を追いかける人生だった。その過程においては様々な苦労があった。しかし、今になって振り返れば、「何と幸せな人生だろう」と思える。
それは、どんな境遇にあろうとも、「人間として正しいことを正しいままに貫く」ということを強く意識し、現在まで実践し続けてきたことがもたらしてくれたものではないかと思っている。
人は誰でも、人生で思いもよらぬ障害に遭遇する。そんな時、どちらに向いて進むのかは、すべて自分の「考え方」から来る判断である。その1つ1つの判断が集積されたものが、人生の結果となって現れる。ならば、常日頃より、自らを正しい方向に導く考え方に基づいた判断をしていれば、どんな局面でも迷うことはない。
自らを正しい方向に導く考え方というものは、まさに闇を照らす光である。人生行路を歩いていく時に、素晴らしい人生へと続く道を示してくれる羅針盤となってくれる。
「考え方」が人生や仕事の結果を左右する
私は長年、次の「人生の方程式」の値を最大にするよう、日々懸命に仕事に取り組んできた。
人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力
この方程式は、「能力」「熱意」「考え方」という3つの要素から成り立っている。能力を点数で表せば、個人差があるから、0点から100点まである。熱意も、やはり0点から100点まである。
考え方とは、その人の思想、哲学、理念、信念などを総称したものである。これが最も大事な要素であり、方程式の結果を大きく左右する。なぜなら、考え方には、悪い考え方から、良い考え方まで、それぞれマイナス100点からプラス100点までの大きな振れ幅があるからだ。
能力も熱意も、高ければ高いだけいい。しかしそれ以上に、自分の考え方がプラスなのか、それともマイナスなのか。さらに、その数値は高いのか、低いのかということが、人生や仕事の結果を大きく左右するポイントになる。
人間としてのあるべき姿、原点に立ち返る
2010年2月からおよそ3年にわたって携わった日本航空の再建は、まさにこの人生の方程式の格好の証明になった。
私はまず幹部社員を集め、リーダー教育を徹底的に実施した。経営のあり方とともに、「人間として何が正しいのか」という判断基準、リーダーが持つべき資質などを集中的に学んでもらった。