2017年6月号掲載
SPRINT 最速仕事術 あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法
Original Title :SPRINT:How to Solve Big Problems and Test New Ideas in Just Five Days
著者紹介
概要
最小限の時間で最大限の成果を出す、グーグル生まれの仕事術。それが「スプリント」だ。アイデアの発案から問題点の発見、解決、検証までをわずか5日間で行い、最良の答えを導き出す。その実践方法とは、具体的にどのようなものなのか。5日間で行うべきプロセスを、スプリントの開発者らがわかりやすく解説する。
要約
「スプリント」とは何か?
「スプリント」とは、GV(グーグル・ベンチャーズ)が活用しているプロセスのことである。アイデアを試作品(プロトタイプ)の形にすばやく落とし込み、それを顧客とテストすることによって、たった5日間で重要な問題に答えを出す手法をいう。
たいていのスタートアップ(新しいイノベーションやビジネスモデルをもとに急成長させ、短期間での株式公開や売却などを目的としてつくられる組織)は、1つの有望な製品に一か八かの賭けをして資金が尽きてしまう。
だが、スプリントを行えば、製品の構築・公開というリスキーな賭けをする前に、正しい軌道に乗っているかどうかを判断できる。
「難問」に立ち向かう
まずは、スプリントの実例を紹介しよう。
2014年5月、GVのジョン・ゼラツキーは、GVが出資した会社、サヴィオークを訪れた。彼が「マシン」を見たのは、この時が初めてだった。
「これがロボットの『リレイ』だ」と、サヴィオークのCEOスティーブ・カズンズは言った。リレイの形状は、高さ1mほどの円筒だ。上部に顔のようなパネルがついており、自律走行する。近くのホテルで来月サービスを開始し、宿泊客(ゲスト)に歯ブラシなどを届けることになっていた。
だが1つ問題があった。ゲストがお届けロボットを気に入らないかもしれない。気味悪いとか怖いと思われたらどうしよう? このロボットに人前でどんなふるまいをさせるべきか、彼らは決めかねていた。それはロボットの根幹に関わる、成否を左右する重要な問題で、試験運用が始まるまでの数週間で答えを出す必要があった。
まさにスプリントにもってこいだ。
「重大なリスク」を特定する
まず、サヴィオークのチームメンバーは月曜日から金曜日までの予定をすっかり空けた。
次に期限を設定し、ホテルとの間で、金曜日に試験運用を行うことをとり決めた。金曜日までの4日間で実用的な解決策(ソリューション)をデザインし、プロトタイプを作成しなくてはならない。
月曜日は、この問題についてわかっていることをすべて洗い出した。そして、重大なリスクを特定するために、「マップ」をつくった。