2018年2月号掲載
「欲しい」の本質 人を動かす隠れた心理「インサイト」の見つけ方
著者紹介
概要
今の時代、買って不満を感じるレベルの商品はほとんどない。だが、とりたてて「欲しい」ものもない。消費者の多くがこう感じる中、どうすればヒットを生み出せるのか。カギは「インサイト」(人を動かす隠れた心理)にある、と本書は指摘。その読み解き方や、消費者の「欲しい」を刺激するアイデアを、事例を交えつつ公開する。
要約
人の“欲しい”は隠れている
人は何を「欲しい」と思っているのだろう?
多くの人が、それを知りたいと思っている。「欲しい」がわかれば、新しい価値を生み出せるからだ。しかし、そう簡単に人々の「欲しい」は見えてこない。なぜなら、それは隠れているからだ。では、どうしたらいいのか?
隠れているものを探すには、道具が必要だ。それが、「インサイト」である。インサイトとは、「人を動かす隠れた心理」のこと。これがわかれば、見えない「欲しい」が理解できるようになる。
マクドナルドの大きな誤算
インサイトを事例で説明しよう。
日本マクドナルドは、アンケート調査で「ヘルシーなメニューを食べたい」という声が寄せられたため、新商品「サラダマック」を導入した。しかし売上が伸びず、ほどなく商品は撤退する。この後、今度はハンバーガーの肉の量を大幅に増やした「メガマック」を発売すると、これが大ヒットした。顧客が求めていたのは、実は「ヘルシー」とは正反対の商品だったのである。
ここから推測すると、マクドナルドに対する消費者のインサイトは、実は「食べ応えのあるハンバーガーを見せられると、ガブッとかぶりつきたくなる」だったといえる。サラダマックの失敗は、消費者がマクドナルドに感じていたインサイトと、実のところはズレていたために起こったのだ。
「隠れた心理」を探る
重要なポイントは「隠れた心理」という部分だ。消費者が普段、意識していない心理、消費者自身も気づいていない無意識の領域の心理。これらに着目することで、顧客を動かすことができる。
先ほどのアンケート調査で、「ヘルシーなものを」と考えるのは、人々が「健康」を普段から意識しているからだと考えられる。それに対して「肉をガブッと食べる」のは、「不健康」という印象を与える行為だ。だが、ハンバーガーを食べた経験のある人なら、肉のおいしさは記憶に刻まれている。健康という建前的な意識が覆い隠している、「肉を食べる快感」という欲求を刺激する。これが、メガマックの成功の理由なのだ。
キーインサイト、バリュープロポジション、アイデア
インサイトを基にした、隠れた不満や欲求のエッセンスを「キーインサイト」と呼び、キーインサイトを充たすための価値提案を「バリュープロポジション」と呼ぶ。後者が前者に応える関係になっていれば、消費者に受け容れてもらえる。
そして、そのバリュープロポジションに集約された、価値を体験させる具体策が「アイデア」だ。
ネスレ日本のチョコレート「キットカット」を例に説明しよう。