2018年3月号掲載
マーケティングの教科書 ハーバード・ビジネス・レビュー 戦略マーケティング論文ベスト10
Original Title :HBR's 10 Must Reads For Strategic Marketing
- 著者
- 出版社
- 発行日2017年12月20日
- 定価1,980円
- ページ数284ページ
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概要
レビット、エデルマン、ケラー…。『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌が過去に掲載した、斯界の権威のマーケティング論文の中から選りすぐりの10本を紹介。理論的なものから実践的なものまで。収益性の高いビジネスを実現する上で、全ビジネスパーソンが知っておきたいマーケティングの考え方を集約した、まさに教科書だ。
要約
『マーケティング近視眼』
セオドア・レビット
ある産業の成長が鈍ったり、止まったりする原因。それは、市場の飽和にあるのではない。経営に失敗したからである。
事業衰退の原因は経営の失敗にある
例えば鉄道が衰退したのは、旅客と貨物輸送の需要が減ったためではない。また、鉄道以外の手段(自動車、トラック、航空機など)に顧客を奪われたからでもない。鉄道会社自体が、そうした需要を満たすことを放棄したからなのだ。
鉄道会社は自社の事業を、輸送事業ではなく、鉄道事業と考えたために失敗した。事業の定義を誤った理由は、輸送を目的と考えず、鉄道を目的と考えたことにある。顧客中心ではなく、製品中心に考えてしまったのだ。輸送産業と定義すれば、鉄道会社にも成長できるチャンスがある。鉄道による輸送だけに限定することはないからだ。
また、映画会社が危機に陥ったのは、テレビの発達によるものではない。鉄道会社と同じように、事業の定義を誤ったからだ。映画産業をエンタテインメント産業と考えるべきだったのに、映画を制作する産業だと考えてしまったのである。
映画という製品は、他のもので代替などできない特殊な商品だ ―― こう考えると、自己満足が生まれる。ハリウッドはテレビの出現を自分たちのチャンス ―― エンタテインメント産業をさらに飛躍させてくれるチャンスとして、テレビを歓迎すべきだったのに、これを拒否してしまった。
ハリウッドが、製品中心(映画の制作)ではなくて、顧客中心(娯楽の提供)に考えていたら、財政的に苦しむこともなかっただろう。
R&Dに潜む危険な罠
会社の成長を脅かす、もう1つの危険は、トップマネジメントが技術のR&Dを進めさえすれば、利益は間違いないと思い込んでしまうことである。
例えば、急成長のエレクトロニクス会社がこれほどの地位に立てたのは、技術研究の賜物と強調しすぎることは的外れだ。エレクトロニクス会社がもてはやされるようになったのは、大衆がこの新しいアイデアに強い関心を示したためである。
優れた製品を開発したことで成功した場合、経営者は製品を使う顧客よりも、製品を重視する。そして、成長し続けるにはたえず製品の革新と改良を続けることだ、という信念が生まれる。
また、経営者はエンジニアや研究者を重視する。そのため、マーケティングを犠牲にし、研究と生産に重点を置く。企業の使命は、顧客ニーズの満足ではなく、製品の生産だと考えてしまう。その結果、マーケティングは、製品の創造と生産という、第一義の仕事の完了後にすべきことで、余分な二義的な活動という扱いを受けることとなる。