2025年1月号掲載
バブルと資本主義が日本をつぶす ――人口減と貧困の資本論
- 著者
- 出版社
- 発行日2024年10月10日
- 定価968円
- ページ数235ページ
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著者紹介
概要
日本は今、衰退の一途をたどっている。歯止めのかからない“異次元”の少子化、バブルともいうべき株高、“中間層”の分解、等々。これら、すべての背景にあるのは「貧困」であり、そして「資本主義」である。マルクス経済学者が、社会に貧困をもたらす原因 ―― 資本主義が成立して以来の根本的な問題を指摘し、警鐘を鳴らす。
要約
人口減の認識は不十分
このところ気になって仕方がないのは、迫りくる人口減の問題である。1950年は年間234万人程度だった出生数が、2023年は73万人弱だった。
私の予想では100年後の出生数は25万人程度まで縮小する。つまり、2124年の出生数は、1950年の1/9~1/10程度にまで縮むのだ。
もちろん、これは現在の少子化トレンドが続くのならという前提の話なので、根本的な社会変革が起きればそうはならない。問題は、この危機をどこまで真剣に考えているかということにある。
ヨーロッパの少子化対策
「人口減」は日本だけが経験しているものではない。だが、1990年代半ばからの十数年間に、多くの国々の合計特殊出生率は上方に反転した。
その理由に、ヨーロッパ諸国の「少子化対策」の充実がある。少子化対策の結果、フランスでは一時「合計特殊出生率2.00」まで回復しており、適切な対策は、一定程度の効果を発揮する。
フランスで効果を上げた対策としては、高額の「子供手当て」の支給がある。子供手当ての手厚さによって最大0.3程度の特殊出生率の改善が可能となるということである。
貧乏人は子を生むなという「異次元の少子化対策」
ただ、少子化対策でも、人口を定常化するために不可欠な合計特殊出生率2.07まで戻らないということは、それでもなお欠けている重要な「施策」があることを意味する。それはやはり、どの国でも残存している貧困だと考えざるを得ない。
日本の場合はそれが最も明確で、今や男性では4人に1人以上が未婚のまま生涯を終える。その主な原因が非正規労働への従事などによる貧困(結婚・出産に必要な所得の欠如)だ。
今、もしこの数字が1/3まで上がると仮定すると、人口の2/3の部分が平均して3人の子供を育てなければ社会全体が平均して2人の子供を育てることにはならないが、一部が2人しか育てなかった場合、同率の人々がそれを補うべく子供4人を育てる必要がある。これは実際不可能だ。
だから、やはり全人口の1/4や1/3という層をおいてきぼりにしたままでは、合計特殊出生率を2.07まで戻せない。つまり「貧困の撲滅」、言い換えれば「完全なる平等化」が必要なのだ。
ただし、こうであればあるほど、「異次元の少子化対策」は不十分極まりないことがわかる。例えば、政府が2025年度から「第3子以降の子供の高等教育の無償化」を計ろうとしている。だが、これは子供を持てる家庭への補助金でしかなく、出生数減の最大の原因である貧困層にはまったく目が向いていない。この政策は要するに「貧乏人は結婚できず、子供を産まなくてもよい。他でカバーしますから」といっているのである。