インテュイットには、小切手帳の収支管理を目的としたクイッケンという会計ソフトがあった。そして年月とともに、個人の収支を管理するソフトへと進化を遂げた。これは戦術的な進化である。
ところが、このソフトを事業会計の管理に使う個人事業主が現れ始めた。インテュイットを創業したスコット・クックは、そういう使われ方をするとは思ってもいなかったが、その事実を知ると、中小企業の帳簿を管理するという課題を解決するための商品を新たに開発した。こうしてクイックブックスが誕生し、今日では10億ドルを売り上げる製品となった。(中略)
要するに、個人の当座預金口座を管理するために使っていた戦術に、まったく異なる課題の解決という別の目的を持たせた結果、新しいビジネスモデル、すなわち、プランBが生まれたのだ。
解説
ビジネスモデルを修正する方法、すなわち、最初に立てた「プランA」を環境の変化に応じて「プランB」に進化させる方法は2つある。
1つは、既存の戦術の改善や新しい戦術の開発を絶えず行うことで進化を遂げるやり方だ。ほとんどの戦術は、時とともに効果が薄れていく。だから、戦術を常に見直すことを忘れてはならない。
もう1つの方法は、トップダウン式に上層部が意図的に進化させる「戦略的な進化」である。その好例が、上述のインテュイットだ。
この例のように、プランBは、既存の戦術を使って、全く異なる課題を解決する場合に生じることがよくある。だから、「他に解決できる課題はないか?」と自問自答することは、とても大切である。