世間とは個人個人を結ぶ関係の環であり、会則や定款はないが、個人個人を強固な絆で結び付けている。

解説

 「世間」には、形をもつものと形をもたないものがある。「形をもつ世間」とは、同窓会や会社、政党の派閥、スポーツクラブなどであり、「形をもたない世間」とは、隣近所や、年賀状を交換する人などの関係を指す。本書がいう世間とは、主として形をもたない世間のことである。
 多くの日本人が属している世間は、比較的狭い。彼らにとって「人類」などという観念は遠いものにすぎず、実感をもって仲間と考えているのは自分の世間の中の人だけだ。
 例えば、団体旅行の場合、小さな世間がそこにはできていて、列車の中で宴会が始まれば、その世間に属さない人の迷惑などはまずかえりみられない。自分たちの世間の利害が何よりも優先される。このように世間は排他的である。
 世間については、他にも注目すべきことがある。
 例えば、政治家や財界人などが何らかの嫌疑をかけられた時、「自分は無実だが、世間を騒がせたことについては謝罪したい」と語ることがある。この言葉を英語やドイツ語などに訳すことは不可能だ。西欧人なら、自分が無実であれば最後まで闘うことになるだろう。ところが日本人の場合、世間を騒がせたことについて謝罪する。
 このようなことは、世間を社会と考えている限り理解できない。世間は社会ではなく、自分が加わっている小さな人間関係の環なのだ。自分は無罪だが、疑われたというだけで、自分が一員である環としての世間の人々に迷惑がかかることを恐れて謝罪するのである。
 日本人は自分の名誉より、世間の名誉の方を大事にしているのだ。

このTOPPOINT NOTEを読んだ方は、
他にこんな記事にも興味を持たれています。

新刊ビジネス書の
要約を紹介する月刊誌
『TOPPOINT』
本誌を
サンプルとして無料
お送りいたします。

  • book01

    熟読

    毎月大量に発行される新刊ビジネス書や、文化、教養に関する新刊書などを、100冊前後吟味します。

  • book02

    厳選

    熟読した本の中から特に「切り口や内容が新鮮なもの」「新たな智恵やヒントが豊富なもの」10冊を厳選します。

  • book03

    要約

    読者の方が、本を購入される際の「判断基準」となるよう、原著の内容を正確に、わかりやすく要約します。

購読者の約7割が、経営者および
マネジメント層の方々。
購読者数は1万人以上!
その大半の方が、6年以上ご愛読。

まずは、1冊無料試読
TOPPOINT編集部厳選「必須のビジネス名著100選 2024年選書版 オールタイムベスト10ジャンル×10冊」を1部無料謹呈! TOPPOINT編集部厳選「必須のビジネス名著100選 2024年選書版 オールタイムベスト10ジャンル×10冊」を1部無料謹呈!