踏まれても踏まれても立ち上がる。これこそが、誰もが期待する雑草の姿だろう。人々は、踏まれても踏まれても、負けずに立ち上がる雑草の生き方に、自らの人生を重ね合わせて、喝采を惜しまない。
そんな雑草の強さにあこがれる方々には誠に申し訳ない話だが、残念ながら雑草は踏まれたら立ち上がらない。
解説
歩道やグラウンドなど、人がよく歩くような場所に生えた雑草を見てみると、どれも、ぺったりと地面に張りついている。
これは、踏まれて倒れてしまったのではない。立ち上がれば、踏まれた時に茎が折れたり、傷ついたりする。そのため、最初から地面に伏せているのである。
例えばタンポポは、何度か踏まれると、茎を横に伸ばして、地面に近いところに花を咲かせるようになる。こうして、踏まれた時のダメージを小さくしているのだ。
この雑草の作戦は、何とも期待外れで、情けないもののように思えるかもしれない。
しかし、そうではない。
どんなに踏まれても生き抜き、花を咲かせてタネを残す。これが雑草にとって、最も大切なことである。それさえ見失わなければ、小さなプライドなどどうでもいい。
踏まれても立ち上がるような無駄な努力をするよりも、地面に伏せている方がよほど目的にかなっている。単純な根性論よりも、雑草の生き方はもっとしたたかなのである。